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シルス&ルルフィー ちびっこ冒険隊、がんばります! 第一章1

オリジナル小説 シルス&ルルフィー

シルス&ルルフィー ちびっこ冒険隊、がんばります! 第一章1

シルス AND ルルフィー
ハチャメチャ第一章

《 ようこそ! コルーの村へ 1》


「えいやっ!」
やっほぉ。俺の名前は『ロン=シルス』。ただいま剣術の修行中。
かなり伸びた真っ黒な髪の毛と、額から後頭部に掛けて巻きつけてある紺色の布がチャームポイントさ…って、そんな事はどうでもいいから、俺の夢を聞いてくれい!
俺、大きくなったら「パラディン・ナイト」っていう、ナイトの中でも最高位の職業につきたくて、まだ11歳なのに頑張っているんだ。
「せりゃっ!」
俺の相手をしてくれる子は、『フォン=ルルフィー』っていう女の子。
少し前、この村『コルー』へ、隣の「グディウス共和国」って国から引っ越して来た子なんだ。
…まだ9歳だっけかな? なんが~いピンクの髪の毛がよく目立って、よくウサギの帽子を被っているんだけど、今日は被っていない。
まあ、性格がキツくてあんまり好きじゃないから、コイツの紹介はこんなもんでいいか。
「スキ有り! もらった!」
『グディウス協和国』っていう国は、別名『剣の国』。魔法に関してはごく一部を除いて使用も学習も一切禁止らしいけど、ルルフィーはそんな中に生まれちゃった魔法少女。
色々あって、ここ『ヨア王国』へと来たとかなんとか。コルーにはこれからも住み続けるって話。
「なんの、あまい!」
カコン。
ところで気になったかな? 『グディウス共和国』が「剣の国」なら、ここ『ヨア王国』は何か…なんて。…え? どうでもいい? …ま、まあ、…そんな事言わないで。
この国はグディウス協和国とは反対に「魔法」が盛んな国だな、うん。
ヨア王国は一つの大陸を全て占めていてるんだけど、ルルフィーに言わせるともの凄く小さな面積だとか。俺は他の国なんて行った事が無いから判らないけれど、そうらしい。
まあ、話を戻して、どうして魔法が盛んかと言うと、狭い大陸の中に、とにかくあらゆる魔法の源みたいなものが揃っているから。
魔法の源のほとんどは『精霊』と呼ばれる何かに住み着く住人の事。
「なにをっ!」
武器とかでもそうだけど、例えば一言に「武器」と言っても「剣」やら「斧」やら、色々あるでしょ? そういったのと同じで、「魔法」にも種類があるんだ。
んー、例えると、そうだな、わかり易いよくある属性で「風」の『ヒュルス』や「炎」の『ヅァン』とか…その種類は8種類。しかも、それはごく一般的なものなんだって。
「ふんっ!」
コキン。
それで、武器を例に使い方を挙げると、各武器には一般的な使い方がある事は知っているよね? 剣なら横に振ったり、槍なら正面に突いてみたり…とかね。
だけど、一般的な使い方と一般的な使い方とでは、機敏な人とか、力持ちの人とか、何か相手に有利な点を持つ人が言葉通りに有利になっちゃって、場合によっては一方的な戦いになるでしょ?
そこで考え出されるのが、人それぞれが自分の長所や性格を考慮して編み出される『オリジナル技』。
自分だけの「隠し技」ってヤツね。
「せいっ!」
まあ、オリジナルなんだから、器用な人ともなると10通り、20通りと技を持つ人もいるらしいんだけど、持てばいいってもんでもなくて、中には無理がある技もあるみたい。
余談だけど、「剣の国・グディウス」育ちの人ともなれば、そういったオリジナルを2、3通り持たないと周りにダメな人扱いされるらしいんだ。変な国だよね。
「はっ!」
コン。
さてさて、「剣の国・グディウス」が『技』なら、魔法の国…とは言われていないけど、ヨアならどうなるのか?
特別な言われ方をされていないんだから、「魔法を覚えなければならないっ!」って事もないんだけれど、やっぱりあるんだなぁ。『オリジナル魔法』。
「よし、くらえっ!」
魔法属性の種類はさっき言ったように8種類。扱い方については、ただ「えいやぁ~」と言えば飛び出す単純なものから、魔法陣を描いたりして、そこから効果を発揮させる複雑なものまで幅が広いんだ。
また、「属性」っていうのは表現が2つあって、まず1つ目は魔法そのものに対する「目で見る印象」または「効果」のこと。
例えば「火」って赤く燃えて熱いよね。…だから、「赤く燃えて熱い」というイメージそのものが「火」って感じカナ?
それじゃここで、「目で見る印象」と「その効果」の各属性。それに加え、属性のきちんとした呼び方を教えてあげる!
ちなみに「きちんとした呼び方」っていうのは、各属性に与えられた本来の呼び方のこと。大体の人は『旧魔法』なんて表現するけど、実際には『旧魔法名称』。どうでもいいんだけどね。
覚えられるかどうか不安? 気にしないで。俺だって良く判らないから。あはは。
…じゃ、教えるよ。

○ シルスくんの頼りない魔法講座―初級―

まず、たった今言った「赤く燃える」炎。これは『ヅァン』と言って「火」の属性を意味するんだ。熱いよね~。
次、「水や霧」…と、水分が主体の魔法。これは『ハロス』と言って、文字通りに属性は「水」。涼しいよね~。ちなみにルルフィーが好む属性でもある。すぐに忘れてもいいよ。
お次は「土・石・砂」。また、「硬い」イメージ。判り易いね。こちらは『ディリク』と言って、「地」の属性。痛いよね~。
続いて「目に見えない・青や緑、白く薄く透明な光」。ちょっと表現がややこしいケド、これは『ヒュルス』と言う「風」の属性。俺の得意分野? 爽やかだよね~。
さあ、ここからは一般の属性の中でも「やや高度」と言われる属性だ!
いきま~す。まず初めに「黄色の光・閃光」。あらゆるファンタジー分野でお目に掛かる事の多い『サズンディ』と言う「雷」の属性。本当に魔力が強い人が行使すると「青い光」にもなるらしい。怖いよね~。怒った時のお父さんみたい。ゴ~ンって。
次は水と風の両方を習得しなければ成立しないとされる『サファンシー』と言う属性で、「氷」を意味する。見た目も肌触りも「雪・氷」。寒いよね~。
そしてこれもファンタジーには欠かせない、「白い光・聖光」。ん~、どう考えても「光」の属性。『シーマ』と言うもの。眩しいよね~。
そして最後は「暗闇・恐怖」など、あんまり好んじゃいけないとされる『ディーン』と言う「闇」の属性。ドロ~ンってしてる?

○ シルスくんの頼りない魔法講座―初級―
―終了―

そして、「属性」の2つ目(忘れてた?)。
一言に属性という言葉でも、細かくすれば一般に8種類あるという事は解ったよね。そして、一部を除いた生物のほとんどには8種類の属性のうち、どれかが定まったカタチで備わっているんだって。
一言に種族間の遺伝みたいなものなんだけど、例えば、「火の精霊」と呼ばれる「サラマンダー」というトカゲみたいなのがいるんだけど、そいつは怒ると『叫べば火を吹く・手を振りゃ火が飛び散る』…と、何をやっても火を出しちゃう生き物なんだ。
こうなりゃもちろん、サラマンダーの属性は「火」。
そんなサラマンダー君が、例えば「俺、地の魔法が得意っス」なんて言って、「地」の魔法を自在に扱ったとしても、もともとが「火」の属性。
どんなに幅広く「地」属性を扱えても自分の属性である「火」に勝る事はないとか…。
まあ、遺伝だね。
中には突然変異と言って、同じ種族間から全く異質の属性の者が現れる事もあるというけど、そんな細かい事はどうでもいいや。
ところで、今の話を聞いたキミは、「人間の持つ属性」がわかるかな?
さあ考えよう! やっぱ、人は地を歩くから「地」の属性?
イヤイヤ、ところがどっこいで、主に精霊を除いた『人型』と呼ばれる種族には、何故か定まった属性が存在していないんだ。すなわち人間は属性遺伝を無視する一部の生物、なんて表現されている、とかなんとか。
人間の属性を決める基準とは、ワリと簡単。
自分で実際に魔法を使ってみて、他の属性よりも楽に出せたり、威力が高いものが個人の属性になるんだ。
実際に俺で例えると、俺の属性は「風」ってみんなが言うんだ。自分でもそう思っている。
だって、お父さんの属性の「雷」なんか、どんなに頑張って一番簡単な魔法を唱えても、静電気みたいな小さなパチパチが手の先から見えるだけ。
だから、「じゃあ、俺はお母さん似かな?」って思って「火」を練習した事もあったけど、これもダメ。手は熱くなるけど火も出なけりゃ赤くもなりゃしない。
そこである時、自分で一番好きな「風」を試したら、これは何の練習もなしに効果が出たんだな。村のド真ん中で。
いや~…あの時はびっくりしたよ。自分でも想像外の威力で魔力効果が飛び出すんだから…。
今思えば、人に当たらなくて良かったと思うよ。そういった時に限って、半ばヤケクソの力を振り絞ったりするからね。
そんなわけで、俺の属性は「風」となるわけ。親から属性を受け継ぐといった決まりは特に無いんだって。
あと、ルルフィーの属性は「火」。
本人は「水」が大好きで、必死に練習した結果、チョロチョロと効果が出るようになったんだけど、やっぱり属性である「火」のほうがダンゼン強力! …というウワサ。
ところでキミの属性は? 「数学」? …「国語」? え? 現実的でつまんない? …ごめんなさい。
また、属性にはそれぞれ対立しちゃう関係があって、例えば「火」と「水」じゃ、その効果を互いに消しあっちゃうんだ。これは相性みたいなものだね。そう考えると、ルルフィー、ザーンネン。
ぶおんっ!
「うわっと!?」
でもね、高度な魔法使いにもなると、その対立を中和させる事によって、更に強力な魔法を扱う事も出来るんだって。
更に、「魔法」と一言に言っても、幾つかの種類があって、ごく一般的に使われているのは人がよく言葉にする『魔法』。
それと、少し前まで使われていた『旧魔法』。
これは一言には言いようが無いんだけど、さっきの講座内にあった『』の中のカタカナがその属性名称。「風」といえば『ヒュルス』なんだ。もちろん、表現を「風」にしようが「ヒュルス」にしようが、結局、意味はまるで同じなんだけど、旧魔法は今現在よく使用されている魔法と違って、威力は高い反面、ちょっとややこしいものがほとんど。今じゃ簡単なもの以外は忘れかけられているとか。
また、旧魔法の特徴は結構判り易いもので、ナゼか『○○ヒュルス』とか、『ヒュルス○○』といったように、必ず『ヒュルス』の言葉が入っているんだ。俺が修得している旧魔法最低ランク『ヒュルス・バスティス』もそのうちの一つ。これしか知らないけど…。
「いい加減当たれっ! ばかシルス!」
…うるさいなあ。
そんで、まだ幾つかあるんだけど、なんだか魔法の説明だけで話が終わっちゃいそうな勢いだから、すっ飛ばして種類を言うね。
まずはその場に何かの意思を持った者を呼び寄せる『召喚魔法』。
…あと、何らかの理由で正当な魔法と認められていない『禁止魔法・禁術』。
他には『合体魔法』に『合成魔法』、『複合魔法』に『精神魔法』、『古代魔法』etc………。ってなモンだい!
ホントは説明したいんだけど、あんまり聞かないで。…だって、子供だも~ん。…ゆるしてね。
「ほら、チビスケ、遅れているぞ」
「なにおー!?」
言い返しちゃった。
それで、ようやく到達。『オリジナル魔法』なんだけど、覚えてた?
これは自分で編み出す魔法、と、いうのは『オリジナル技』と同じ。
そして、編み出し方次第で強くも弱くもなる、と、これもまた技と同じ。ただ、武術による「技」が「魔法」に変わっただけなんだ。
そ・こ・で…、実は俺も一つ、持っているんだー。『オリジナル魔法』。…見たい?
「こんのーっ!! 本気だしちゃうからっ!!」
…じゃあ見せてあげる。こいつ黙らせるにもいいや。
「へへ…」
「…え?」
俺が構えを変えたら、ルルフィー、なんだか驚いてる。ふふ、もっと驚け。
「大いなる風の精霊神に命ずる! 汝、その身を我が矢と化し、無数の刃を立ちはだかる悪に背けよ!」
「し、シルス!?」
俺の背中の後ろで小さな風の精霊が集まってくるのが判る。魔法なんて、あまり使わないから失敗したかと思ったけど…、フフッ、いける!
「シルス! あんた…」
「いけぇっ! 『スキッド・ロアー』!!」
魔法詠唱を完成させて、その名前を叫んだ瞬間、帯を引く無数の「風の矢」が、俺の突き出した右手の方向をまっすぐに飛び出して、ルルフィーの少し上を通過して遥か遠くへ消えていった。
「どうだっ!」
どう? どう? 見た? 見た? え? 文字ばっかりでわかんない!? ガーン…。
…まあいい。それよりもルルフィーったら…へへ、しりもちついて、キョトンとしている。
そして表情がみるみる変わって…多分、何か言うね。当ててみよう、そうだな、初めの一言は『バカぁー!』。かな?
「…こんのぉ…アァーホンダラァー!!!」
ほらね、ハズレ。…ちょっとびっくり。
「な…何だよう!? お、驚かすなよぅ…」
ちょっと余裕ぶって思っている事を言いたくても、なんだか言葉に「驚き」が出ちゃう。…だって、ルルフィーの顔、怖いんだもん。
「『驚かすなよ』じゃないでしょ! 驚いたのはこっちよ! 今は剣術の練習中でしょ!?
『剣術』!」
あ。…しまった。つい、忘れてた…。
「あ、あのね…」
「何よっ!?」
「い、いやぁ~…」
ずんずんと迫ってくるルルフィー。頼むから、もっと、こう、にこやかに…。
「あんたねぇ、人が質問しているときにっ! なぁんで上の空みたいにへらへらしてるのよっ!? そういえば今日は練習に気が入ってないよ。ずっと! 何考えているんだかわからない顔しててっ! そんでイキナリ魔法だなんてっ!! …わかるように説明しなさいね! なぁぁぁんでいきなり魔法を出す気になったの!? 言ってみなさい!!」
「あ…あのね…、読者にね、説明ついで…」
「『読者』!? 『説明』!?」
『あんた、何ワケわかんないこと言ってんのよ』とでも言いたそうなルルフィー。いやはやごもっとも。
「…で、でもね、外したでしょ? 当てる気は無かったんだよ」
ほんと、ほんとだよぉぅ~。
「ちがうの! あたしは『驚いた』って言ってんの! …判らない? ほらぁ~」
あ~あ、急にお母さんぶってきたよ。はいはい、謝ればいいんでしょ? 謝ればぁ?
「わかるじゃない」
俺が『謝り』の仕草にしょんぼり構えると、今度は『イジワル姉ちゃん風』に腕を組むルルフィー様。ああ、イヤダイヤダ。
「さきほどはぁ~、おどろかしてぇ~、すいま…」
もちろん、謝る気なんて無いよ。逃走準備。
「せん…で・し・たぁ~! このば~か!!」
うりゃーー! 逃げるぜ!
「なんですってっ!? あんたねー…!」
へーんだ、バーカ。偉そうにしているからこっちの考えも見抜けないんだよーだ。
…と? …あれ? 誰か呼んだ?
茂みを掻き分けながらガサゴソと練習場から逃げている途中、聞き覚えのある声が?
「ギルスさーん、こっち。どうしたの?」
ゲッ、ギル…、…お父さんかよ。…何も言われなきゃいいんだけど…。
「………」
木に隠れて、ちょっと見学…。
あ、やっぱりお父さんだ。
お父さんと、ルルフィーのお父さんの『アルフさん』に、『レッタさん』、あ、『ピニーのおっちゃん』まで居る。みんな揃って…どうしたの?
何かをルルフィーに向かって喋っているアルフさん。何を言ってるんだかは聞こえない。
あー、気になる。
「ねー、みんなでどうしたの?」
何も考えないで練習場に戻る俺に、
「ああ、シーくん」
…と、ピニーのおっちゃん。
「おお、シルスか。探したぞ」
…と、お父さん。
「ああっ!? シルスッ!?」
…と、ルルフィー。……しまった…。

シルス&ルルフィー ちびっこ冒険隊、がんばります!

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