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シルス&ルルフィー ちびっこ冒険隊、がんばります! 第一章3

オリジナル小説 シルス&ルルフィー

シルス&ルルフィー ちびっこ冒険隊、がんばります! 第一章3

シルス AND ルルフィー
ハチャメチャ第一章

《 ようこそ! コルーの村へ 3》


「そんなもん持って…何するつもりじゃ?」
部屋の中では召喚できないという事で、ヨファルさんと一緒に外に出てきた俺。
ヨファルさんが気にしているのは、ずっと俺が持ち続けているレイピアのこと。
「え? あ、コレ? な、何でもないよ。…き、気にしないで。あははは…」
聞けば一発で「コイツ、何か企んでるな」と思われそうな言葉も、この人になら大丈夫。
「そうか、召喚者相手に振るう事無く」
…と、ほら、全く気にしてないよ。俺はレイピアを隠す事もなく、それはもう、堂々とヨファルさんの後を追う。
行き着いた先は俺の家の裏だった。
「いつ見てもいい眺めじゃの」
空から照りつける太陽の光を眩しそうに、ローブのフードを被りながらそんなことを言うヨファルさん。
俺の家の裏って、ちょっとした崖になっていて、ここから山の麓はもちろん、広い範囲で王国を見る事が出来るんだ。
どんなものが見えるかといえば、だぁー…っと広がる数種類の『緑』に、ヨア王国を横断する『イースト・ロード』と呼ばれる道や、デルモの森からアールム城に続く道。
また、それに沿ってちょこちょこと民家も見える。
視線を少し上に上げると、ここ、デルモの森よりももっと深いと言われる『ギルスの森』も見えるし、その中央にある『アールムの実』と呼ばれる木も見える。
ただ、残念な事は、今言った目に見えるものって、がけの隅っこ(危険!)に立って見えるものばかり。普通に見えるものといえば、ヨア王国を五つの地名に分ける内の一つ、『ソドムス地方』という中のソドムス平原しか見えないんだ。目の前の木が高くてね。
ちなみに、デルモ山があるのは『ニース地方』。目の前の大きな木さえなければ、危険な場所に立たなくてももっとよく見えそうなのにな。
…まあ、また今度紹介するから、今はパスね。
視界を遮る木があるのは事実だけど、それでも村の人はここから広がる景色の事を『まるで全てが見えそう』と言って好んでいるらしい。大げさだよね。
その中でも、とりわけヨファルさんはこの崖を気に入っているらしく、いつも晴れた日にここに来ては、さっきみたいに「良いな」と言って眺めているんだ。
でもね、でもね、聞いて!
俺だってこの崖が大好き。
俺には将来『パラディンになりたい!』っていう『夢』があるけど、何もそれだけが『夢』じゃないんだ。
自分で言うのも変だけど、俺ってとっても欲張りで、『夢』だって1つじゃない!
幾つかある『夢』の中にはこの崖が関係するものだってあるんだ!
教えてあげる! えっ、聞きたくない!? そ、そう言わずに…。
…気を取り直して…。
幾つかある『夢』の1つとは、いつの日か、この崖から空に向かって飛ぶこと(…自殺なんて思わないでね)! どこまでも青く晴れた日に飛んで、高い高い所からヨア王国全体を眺めたいぃっ!!
…と、いうワケで、その為に俺は風の魔法を勉強中…あれ?
あっ! 魔法で思い出した。
「ねえヨファルさん、早く、しょーかん!」
「ほっ? …おお、そうじゃった」
まったく、ちょっと歩くとすぐに忘れる。…俺もだけど。
「どれ…シルス、下がっておれ」
ほいな。
ささっと、俺がその場から少し後ろに下がると、ヨファルさんはそれを確認し、続いて自分で持っていた杖の先っぽを使って何やら地面に描き始めたよ。
初めて見るけど、これが魔方陣の描き方なんだな。
ずっとヨファルさんが魔方陣を描く姿を眺めていると、最初に描き始めたのは子供でもよく描く、一本線の五芒星。次に、その五芒星を二重の円で囲む。そこでいったん魔方陣から離れ、肩をコキコキとリラックス。これで終わりかな?
と、そう思いきや、再び五芒星の絵を崩さないようにして中に入り、その中央に立った。
これから魔法詠唱だな。
俺がそう睨んだと同時に、中央に立っていたヨファルさんはその場にしゃがみ込み?
…なんだ、また絵を描くのか。結構ややこしい上に、ヨファルさんの行動って判らないところあるよな。
その場にしゃがみ込んだヨファルさん、今度は一本線で描いた五芒星の中、自然と出来た五つの三角の中に、それぞれ記号みたいな絵を書き込んでいく。記号は五つとも異なっていて、俺からじゃ初めて見るものばかりだと思っていたけど、その内二つは判ったよ。
判った記号のうち1つ目は、キミも多分見た事があると思う「男・女」を区別するための記号『♂』ってヤツ。…で、もう1つは魔法属性の記号を表すもので、紋章とも言われているもの。ここでヨファルさんが描いた魔法属性は、他の属性と比較しても簡単と思われる「風」の属性で、三本の横線を上から下へ掛けて右にずらしたもの。
五つの紋章を完全に描き終えたヨファルさん、またも描いた絵を崩さないように外へ。
これが魔方陣か。そんなことを思う俺になんか、まるっきり目もくれず、ヨファルさんの召喚は更に続く。
またも、肩をコキコキと鳴らし、今度は目を閉じる。どう見ても、これは魔法効果を高める為の集中。…でも、この人の場合は分からない。また魔法陣の中に入ったりして。
せっかく「召喚してくれる」という人にいちいちケチつける俺。こんな気持がバレたら怒るんだろうな、ヨファルさん。バレる心配は一生いらなそうだけど。
「大気・大地・大海、世界を創りし大いなる存在に告ぐ! 汝、我が元に馳せ参じ、一時の使命を果たせ! 指すべき者はヒュルス! ………本当に小さな者じゃぞ」
…は? 急に声を小さくして………俺に言ってんの?
「う、うん、いいよ。話ができれば…」
「うむ。…い出よっ! 『テイムタ・ヒュルス』!」
ちょっとびっくり。…詠唱の一部だと思ったよ。
急なヨファルさんへの反応と、これから現れる「何か」に対して、シラケとドキドキが微妙に交わる中、「起きた変化」を俺はこの目で感じ取っていた。
まず、注意しなければ感じないほどの弱い風が何回か吹いて、それが俺とヨファルさんを包むようにして回っていたみたい。
やがてそれは、離れて見ている俺の髪がなびくほどの強さとなり、かと思うと、その風が魔方陣の中央に移動したのが立ち上がる砂埃で分かった。
一体どんな風? そう思って見えない「風」を見ようとしていると、次に変化が起きたのは魔法陣の絵。
説明しようの無い虹色の光が五芒星をつくる溝から溢れ出し、それが一瞬、空高く飛び上がったような気がした。
そうかと思うと、今度は虹色の光を追う様に、二重の円からも真っ白で筒のような光が立ち上り始めた。
これは虹色の光とは違い、ヨファルさんの背丈を越えた当たりで伸びるのを止める。
…と思ったら、あら不思議。二つの光がぱっと消えてしまい、白い筒状の光があった、丁度、真ん中の所に…ある存在が…。
「時の導きにより馳せ参じました。私でよければ、一時の力をそなたに貸し与えましょう」
自分の背中に持つ小さな羽を音も無く上下させ、小さな体の存在はそう言った。
召喚された小さな体の持ち主は、意外と有名な…。
「シルス、この精霊はピクシー族といい、体が極端に小さい事と、羽を持つこと以外では、人間とほとんど変わらない存在じゃ。今回はシルスも飽きないように、言葉の通じる相手で、『男』を呼んでやったぞ」
あーん、ヨファルさん、せっかく人が『物知り風』に説明しようと思ってたのに…。邪魔しないでよ!
…ということで、今、ヨファルさんが言ってしまったように、小さな存在はピクシーという種族なんだ。
もうちょっと説明を付け加えるとすれば、本当に小さな体がピクシーの特徴で、その大きさといえば『手のひらサイズ』…とでも表現すれば分かり易いかな?
小さな体で身が軽そうなだけでも羨ましいけど、その背中に持つ大小二枚ずつの羽で宙を簡単に飛び続けられるのは、なお羨ましい。今も目の前をふわふわと飛んでいる。
それと、これも特徴っていうのかな? 武器か飾りか、つま楊枝よりも細く小さなピンク色の剣を右手に持っていて、他に身に着けているものといえばブーツだけ。ちんちん丸見え。
『ピクシー』という存在を見たのは初めてだけど、昔、本で見たとおりだよ。もっとも、イラストでは服を着ていた覚えがあるけど。
それで、名前は? …なんて聞かなくてもいいか。は~い、ヨファルさん?
「して、そなたの名は?」
不思議ね。俺の考えを読んでいるみたい。
「申し遅れました事をお詫び致します。私、精霊城パスラシームに仕える『ピパレン』と申します。…実は、今回のような魔力によるお呼び出しは初めてでございまして、正直、どう声を掛ければ良いのかも存じ上げておりません。会話の中に不愉快を感じさせるかも知れませんが、どうぞ穏便に…。…で、早速ですが、私は何をすれば宜しいのでしょうか? 御要望を」
小さな小さな頭を一回、こくり。とても礼儀正しい『ピパレン』とかいうピクシーは、そんなセリフでヨファルさんに尋ねる。
「うむ。時を越えてはるばるご苦労。今回、お主を呼んだのは他でもない。男ならではの力が欲しくてな。…この少年をシルスという―――」
言いながら、ヨファルさんは俺をピパレンの前に差し出す。やめてよ、恥ずかしいから。
「―――このシルスのお守りを一日任せたいのじゃ」
………おもり………。
ちょっと落ち込んだよ、俺。
「承知致しました」
多分、俺の表情が見えてないでしょ、二人とも…。あ、ピパレン、俺、なんか落ち込んでいるみたいだから、そんなにニコニコした顔で近付いてこないで…。
「シルス殿、ヨファル殿の命により、この私めがシルス殿を、今日一日、お守りを勤めさせて頂く事となりました。短い時間ではありますが、期限の間、精一杯お守りしますので、何なりとご要望を!」
…はい、多分、俺も知ってた。…ってーか、聞こえた。
「…どうも」
………おもり…か。
「シルスよ、ピパレンも来た事じゃし、ワシは家に帰るんでの。…と、ピパレン、条件は?」
召喚に使用した魔方陣を足で消しながら、思い出したかのようにピパレンに問い掛けるヨファルさん。
本当は説明なんかする気持ちじゃないんだけど、役目だからね。仕方が無いから説明するよ。
ヨファルさんの言葉にあった『条件』とは、いわゆる『褒賞』みたいなものに当たるんだ。
人間がお金や物を受け取る為に何かをするみたいに、精霊だって、お土産の一つも無ければ働いてくれないというもの。
「そうですね、現在、パスラシームでは繁殖しすぎたジャイアント・アントとの交戦の気配が致します。…つきましては、武具を造る為の材料となる金属を分けて頂ければ、我が女王も喜ぶ事でしょう」
ふーん、戦争か。こんな小さな体でも戦うってか…。
ジャイアント・アントといえば、デルモの山や森にもわんさかいるけど、人間の大人よりもずっと大きいんだよ。勝てるのカナ?
ピパレンの体の大きさを見ながら、それに似た大きさの精霊達がジャイアント・アントと戦う姿を勝手に想像していると、ピパレンとヨファルさんとの間で『交渉』の話はどんどん進んでいったみたい。
もう『お守り』のショックなんか、どっかに飛んでっちゃった。ジャイアント・アントは大きいゾ。ピパレン、ガンバッ!

シルス&ルルフィー ちびっこ冒険隊、がんばります!

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